釣りにおける危険、対策と処置

釣り、それは海・川に限らず、危険と隣り合わせの遊びだと言うことを常に認識していただきたい。

楽しく遊ぶのも結構、事故に遭うのは自己責任、己が招いた不始末。

はたしてそうだろうか?

私たちは釣具のポイントという小売店に勤めている。

ポイントは釣り界のリーダーとして、釣り人を危険から回避させる役目も担っているのではないだろうか?

店舗に来られるお客様がいつまでも安全で楽しい釣りを続けられるよう、社員自らが海や川での危険と言うものを認識していなければならないと思う。

海の危険

海で危険な場所、場面と言ったらどのような事だろうか。

まず考えられるのが、磯と呼ばれる岩場が上げられる。

足がすくむような高い岩、足場の悪そうな斜面などに釣り人がいると、見るからに危険なように見える。

しかし、これらは本当に危険なのであろうか。

釣り人は危険を犯してそういう場所へ行っているのであろうか。

それは否である。

もちろんそういった場所で、危険を冒している人もいる、しかし大半の人はそういう不安定な場所でも大丈夫なように装備を万全にし、危険に対する処置を講じているのである。

ひとつが足場をしっかりと固めるという事。

それはスパイクやフェルトの磯靴を履くという事である。

しかし近年はスパイク底やフェルト底がワンタッチで張り替えられる物が増えてきた。

この方式は便利な反面、底を外して洗うと接着力が低下するという重大な欠陥が何回か起こった。

これは完全に乾く前に取り付けてしまったなどの問題もあっただろうが、何回か洗っただけで全く付かなくなったという事もあってはならない問題である。

現在はメーカーも対処してそういう事も起こらなくなったという事であったが、これは取り付けた際に釣り人側も十分チェックすべき事である。

張替えが効かない靴の場合は、破れなどによる水の浸入、スパイクの磨耗、フェルトの極度な磨耗、靴底の剥がれがないか確認をしなければならない。

自社のPB商品についても同じような事が言える。

過去にこういう事があった、熊本の釣り人がショートタイプのPBの磯靴を履き、甑島へ行った。

船がもうそろそろ島へ着こうとしたころ、靴を履いてみると靴に違和感を感じた。

すぐに靴を裏返して調べてみると、靴底が剥げかかっていたのである。

一緒にいた同行者も同じタイプの靴を履いていたのでその事を告げると、なんとその方の靴底も同様に剥げ掛かっていた。

この2人は結局磯に降りる事が出来ず、船にずっと乗ったままで港まで帰ったそうである。

これが近くの磯ならばまだ近くの釣具屋で靴を手配してまた釣りに行けるのだが、甑島までは片道1時間かかる。

この日は釣りがまったく出来ずにいたそうである。

この後この靴はクレームが何件か起こり、回収された。

磯靴の場合、底が剥がれという事実は、事故にも繋がる重大な事である。

お客様にも、釣行の際は必ず事前に靴底の確認を行っていただくようにしてもらいたいものである。

もうひとつの重要な処置としては、必ず救命着(フローティングベスト)を着用するという事である。この救命着は海や川に落下した場合、確実に体を浮かせてもらうものでなければならない。

何年かに1回はちゃんと水に浮くか検査したいものだ。

特に古くなってくると浮力材を覆っている生地が傷んでくる。

水に落ちた途端に破れて救命着としての役に立たなくなったなんて事がないようにしたい。

また暑くなってきたり、一旦磯へ渡ってしまうと、つい救命着を脱いでしまう人がいる。

着替えなどで救命着を脱ぐ場合は、絶対に波が来ない高台に上がり、脱いだものが風で飛んでしまわないように配慮した上で脱ぐ。

それ以外の時は、決して脱がないようにしたい。

水に落下して死亡した人のうち約9割が救命着を着ていなかったと聞いた事がある。

もしこれらの人が救命着を着ていたとしたら、ほとんどの人が助かったのではなかろうか。

また水に落ちた場合、水を飲んでしまう事と、もうひとつ恐ろしい事に低体温症に陥るという事がある。

水に落ちたらすみやかに陸上に上がった方がいいのだが、救命着をつけていない場合はパニックに陥っておぼれてしまう事がある。

救命着で体を浮かせ、心に余裕を持った状態で危機を脱したい。

ちなみに低体温症について以下のような説明がある。

 

 

 

低体温症の正しい対処

 

 

落水者は体温を流出する

 

 

 

乗員が落水したとき、ライフジャケットをつけていれば、すぐに溺れることはない。落水者は水中で体温保持姿勢をとり、救助を待つ。しかし低体温症に陥るのに、時間はかからない。落水者が陥る症状と、その処置を知っておくことは、スキッパーだけでなくても重要ではないだろうか。正しい処置が普及していないために、せっかく救助に成功しても、多くの落水者が回復しなかったのではないかと考えられる。

 

 

水温と体温流出時間(USコーストガードによる)

 

 

 

水温

意識不明に至る時間

予想生存時間

0℃

15分以内

15~45分

0~5℃

15~30分

30~90分

5~10℃

30~60分

1~3時間

10~15℃

1~2時間

1~6時間

15~20℃

2~7時間

2~40時間

20~25℃

2~12時間

3時間~不明

25℃以上

不明

不明

 

 

低体温症のコア体温別症状

 

 

 

軽度
  ~35℃・・・・・さむけ、皮膚感覚の麻痺、手の動きが鈍くなる。ふるえが始まる。
  ~34℃・・・・・筋力の低下、筋肉の協調運動の障害、軽度の錯乱、無関心状態。
中度
  ~32℃・・・・・筋の協調運動の障害が激しくなる。よろめく。手が使えなくなる。思考や会話が遅くなる。
  ~30℃・・・・・ふるえが止まる。体が強直し、歩行や起立が困難となる。思考の論理性・統一性が失われ、錯乱状態に陥る。
重度
  ~28℃・・・・・半昏睡状態。瞳孔が拡大し、心拍・脈拍が微弱になる。
  ~26℃・・・・・昏睡状態。心停止。
  ~16℃・・・・・救命しえた成人の偶発性低体温症の最低体温

 

 

低体温症へとるべき処置

 

 

 

救い出した人の手足を、医師のテキパキとした指示により、温めたタオルでマッサージする・・・「しっかりして!」と懸命に手足や心臓のマッサージを受ける・・・ 結果は、冷たい手足の血が約20℃も温かい内臓の血液に混じり、心臓はショックをうけ、心室細動による急死である。心臓から肺臓に血が送られなくなるからだ。
わが国では、運よく救助されても、「低体温症」に無知な医師や救助隊、仲間の善意にみちた誤処置のハードルはなかなか越えられない。低体温症とは体のコア(深部)にある臓器の温度が下がり、内臓の生理機能が衰えることだ。コア温度が32℃以下では重症の低体温症であり、これが進めば凍死である。今日まで水難や冬山遭難の場で、いかに多くの救助段階での誤処置による死亡「レスキユー・デス」が、疲労衰弱凍死などの名のもとに繰り返されてきたか。まさに寒けがするではないか。

 

 

1.キャビン内へ静かに運び入れ、バースへ上向きに寝かせる。
2.濡れた着衣や靴靴を静かに脱がせ、濡れた体を拭くが、マッサージは決して行ってはならない。
3.意識のあるときは暖かい物を飲ませる。意識のない時は、首筋や手足の付け根を加温し、一刻も早く医療施設へ運ぶ。
4.心拍がなければ心臓マッサージを行う。そして続ける。
最重症の低体温症では心拍数が1分間に2~3回のこともあり、1分間くらいは頸動脈の脈をふれて確認する。心臓マッサージをやめていいのは心臓が動き出したとき。それ以外では、医療機関に手渡した時か,救助者自身の身に危険が迫った場合(二次災害の危険,極度の疲労等)のみ。3時間半以上も心肺蘇生術を続けて後遺症もなく回復した人もおり、絶対にあきらめてはいけない(小児では特に回復の可能性が高い)。

 

 

低体温症の怖さ

 

 

 

  1.安静にしていても大量のエネルギーを消費する
  2.早い時期から判断力がおちる
  3.ふるえがおこらなくなると加速度的にすすむ
  4.単なる疲労と区別が困難
  5.低体温症の知識が普及していない
(よく知られている医学書にも間違った対処法が書かれていたりする)

 

 

 

参照 新田隆三、ひぐま、舟木上総

 

 

 

以上のように水温が16度前後の冬の海では意識のある時間が2時間ほどだ。

これが助かろうともがいて体力を使ったり、体が疲労する時化方であれば時間はもっと短くなる。

意識が無くなると、そのまま溺死することにもなりかねず、大変危険な状態に陥るのである。

海に落ちる状況には、2通りが考えられる。

1つは船から磯に飛び移ろうとした時。

もうひとつは磯で釣りをしていたり、海岸線の近くにいた時である。

これらの時に不幸にも水中に落下したらどうしたら良いか。

この事をしっかりと頭の中に入れ、不意の時に備えて欲しいものである。

いずれの場合も、水に落ちたら当然パニックに陥り、急いで磯の上へ上がろうとする。

しかしすぐに磯に近づくことほど恐ろしい事はないのである。

海が時化ている場合は、磯に叩きつけられる危険性がある。

船から渡っている時に落ちた場合は、磯近くにいると船と磯の間に挟まれる可能性がある。

どちらも致命的な傷を負ってしまう避けなければならない事象だ。

もし不幸にして水に落ちてしまったら、急いで磯とは反対方法に泳いで、まず磯と離れる事だ。

また波により足を掬われてしまった場合は、思い切って磯からなるべく離れた所へと飛び込む。

こうする事によって水に落ちても、救命着で浮いていると、少しは余裕が生まれ、陸へ上がる方向、助けられる船を捜す事が出来る。

なかなか難しい事だとは思うが、出来るだけ落ち着いて対処する事だ。

そして救命着は必ず股ヒモをしっかりと締め、落水の際に救命着が脱げてしまわないようにしたい。

また危険な磯とは他にどんなものがあるだろうか。

それは風向きが変わったり沖に低気圧が発生したりして急激に波が太ってしまう天候と言うものが考えられる。

日本は四方を海に囲まれ、どんな風が吹いても風裏(程度は色々あるが)の釣り場という所がある。

釣り人ならば、まずその日の風裏となる所を探して釣りにいきたい。

冬の日本は西高東低という冬型の気圧配置によくなる。

この気圧配置になると、北西の季節風が日本列島に吹きつける。

北西の季節風が吹くと、往々にして日本の北及び西に面した海は時化てしまう。

したがって九州では北西の季節風を避けて釣り人は大分や宮崎の風裏の釣り場に押しかけるという訳だ。

しかし、九州の釣り場はそれだけでは無い。

五島列島・甑島など、九州にはいくつもの島が有り、その島まで行けば風裏となる釣り場がある場所がある。

そういう所は、島まで行く行程は多少時化ているが、島まで行ってしまえば比較的安全に釣りが出来るのである。

このように各地にはどんな風向の時でも釣りが出来る場所が存在するが、その釣り場のどこに行けばいいかを一番良く知っているのはそこの船頭さんだ。

したがって、船頭さんの言う事、注意事項を良く聞いて、安全に釣りを楽しみたい。

さて前述の波が太ってしまうという話に入ろう。

波が太ってしまう原因となるのが、低気圧の存在だ。

大分や宮崎では天気図上で九州の南に台風が発生したら、釣りが出来ないと言われている。

これは台風の大きなうねりが九州の東海岸に押し寄せるという事で、台風意外にも低気圧が南海上にあっても同じような事がおこる。

波には風で起こる風波と台風などによって起こる波長の大きなうねりという物がある。

簡単に言えば風波とは風と共に海が波立ってきて、波頭が白くなるような事だ。

このような時は、波しぶきをかぶったり、足元を洗われたり、釣りにくくなるが、注意さえしていれば危険からは回避出来る。

問題なのはもうひとつのうねりというものなのだ。

この沖の低気圧からのうねりは波長の長い大きな波の事である。

したがってひとつひとつの波は小さく、皆はあまり気を配らない。

しかし海をよ~く見ていると、海面全体が盛り上がって大きな波としてやってくる事がある。

このうねりに飲み込まれる事故は後を絶たないのである。

うねりは押し寄せる前に往々にして一旦海面がザザーッという音とともに大きく下がる。

そしてその後に突然海面が盛り上がり、何もかも飲み込んでしまうのだ。

したがって釣りをしている時は魚ばかりに夢中にならず、波の音にも耳を傾け、海面の状態にも常に注意を払わなければならないのである。

基本的には海にいる時は決して海に背を向けない。

釣りをしている時、道具を準備している時、片付けている時、休憩をしている時、どんな時でも決して海に背を向けてはいけない。

以上は磯を想定しての事だが、海の危険は果たしてそれだけであろうか。

まったく安全と思われている岸壁や防波堤、釣り公園などでも、運悪く足を踏み外してしまう事がある。

こういう時も、救命着を着ていれば助けをすぐに呼べるのだろうが、着ていない場合いきなり溺れた状態を見ることになり、助ける方もパニックに陥ってしまう。

もし救命着を着ていない場合、すぐにクーラー等浮くものに水汲みバケツなどのロープをくくりつけて投げればいいのだが、ロープの長さにも限りがある(約15㍍)。

その場合は、クーラーだけ投げて、それにつかまってさえもらえば落ちた方も少しは落ち着く事ができるのである。

他に救命ロープを投げるなどの方法はあるが、いつも皆さんがそんなものを用意しているとは思えない。

たぶん助けられる道具としては、クーラー・水汲みバケツのロープ・釣具くらいのものだろう。

これだけのものしか無いと仮定して、どうやって助けるか?

それは浮く物(クーラー)を投げるのが一番いいのだが、それもクーラーの蓋がきちんとしまっていてのものだ。

日ごろから釣っている間も、クーラーやバッグの留め金などは閉める癖をつけ、いざという時に使える状態にしておきたいものだ。

そして落ちた人が何かにつかまって余裕が出来たり、流されてしまいそうになった時は、すぐに海の救急「118」へ連絡してほしい。

最後に最近店舗で売られている救命着にはベストの型をしたスタンダードタイプと自動膨張式、手動膨張式がある。

このうちスタンダードタイプは中に浮力材が入っているので、そのベスト自体に浮力があるが、他の2つはベスト自体に浮力はない。

自動膨張式は水に落ちるとセンサーが水を感知し、ベスト内部にガスを送りフローティングとなる。

手動膨張式はベスト下部にある紐を引っ張る事によってガスが送り込まれ、ふくらむ仕組みになっている。

手動膨張式は磯釣りではリスクが大きく使う事は無い。

大半は船での使用が中心となっている。

自動膨張式に比べ若干安いので手動膨張式を買い求めるお客様が増えているが、それらの人皆が紐を引いて膨らませるという事をわかって買っているのだろうか。

岸壁でもそうだが、人間は不意に水に落ちるとパニックを起こす。

パニックに陥ると、紐を引っ張ることなんて頭には無いのではないだろうか。

このベストを売るものとして、その変の事情を詳しく説明し、くれぐれも事故が起きないようにしていただきたいものである。

川の危険

川の場合はどうだろうか。

川で水に落ちる場合、どういった状況が考えられるだろうか。

ひとつは川岸を散歩などで歩いていて足を踏み外す事が考えられる。

もうひとつは川の中に入って釣りをする際、転んでしまったり、深みに入って流されてしまう事が考えられる。

川は流れがあり、一旦落ちてしまうと下流に向かって流されてしまう。

この流されるという行為に人々はパニックに陥り、水を飲んで溺れてしまうのである。

もし不幸にして川に落ちてしまったらどうすればいいかという事だが、まず一番大事な事は落ちつくという事である。

急に落ちた場合に落ち着けと言うのはなかなか難しい事ではあると思うが、この落ち着くというのが川では一番大事な事である。

あ~あまた落ちちゃったと心の中で思い、体の力をまず抜いてみる。

そして流されている下流に向かい、ゆっくりと泳ぐ。

そして遠くの岸に向かって泳ぎ着くのである。

川は蛇行している場所もあるので、どこか手の届きそうな所があればそこにつかまるのもいい方法だ。

この落ち着いて体の力を抜いてゆっくりと泳ぐという事を心がけてみる。

熊本県の球磨川は急流のアユ釣り場として知られている。

この急流において釣り人は首の所まで浸かってアユを釣っている。

アユ釣りをしていると、何度か流されてしまった人を見かけた事がある。

その人たちのほとんどが「流されちゃった~」と手を振りながら流されていった。

川は深い所もあれば浅瀬もある。

その人たちも、落ち着いてわざと浅いところまで流されようとしているのだと思う。

もうひとつ、川で釣る場合の格好の違いだが、前述したのはアユ釣りで、タイツタイプのウエーダーを履いている。

もうひとつ渓流釣りなどでは胴長タイプのウエーダーを履く。

この2つ、同じウエーダーだが、アユ釣り用はタイツタイプのピッタリとした物を履く。

このタイプだとウエーダーの上まで水がきても、水が入ってウエーダーが膨れる事は無い。

しかし一方の胴長タイプのウエーダーはほとんどのものが防水タイプになっており、側面から水は入らないようになっている。

しかし、川で転倒してしまうと、ウエーダーの上から水が入り、流される原因になってしまう。

また転倒した場合にウエーダーには空気がはいっているので、頭が水の中に、そして足が水面上に来る最悪の事態にもなってしまう。

したがって、胴長タイプのウエーダーを履いている時は、腰よりも深い所にはいかないように、もし行かなければならない時は、細心の注意を払って行かなければならない。

最後に

海でも川でも、もし水に浸かってしまった時に大切な事は、まず落ち着くという事である。

そしてそれぞれの注意事項を守り、落ち着いて対処する。

海も川もどんなに安全に見える場所でも危険は潜んでいる。

末永く楽しい釣りを楽しむ為に、危険から逃れる方法を日頃から見に着けておく、それがポイント社員の使命だと思う。


海・川・湖・池・沼、日本は限りない釣りのフィールドに恵まれている。

以前、海・川での危険性についてその対策と遭難時の処置を書いたが、予想以上の反響だった。

人間、楽しい事にはすぐに目を向けるのだが、危険やその時の対処などの話になると、すぐに顔を背けてしまう。

しかし楽しく釣りをするのも、危険に対する処置を知っているからこそ出来る事だとも思う。

これを機会に1度真剣に危険と言う物について考えてみようではないか。

これから釣りの出来るフィールド毎にそれぞれの場所での危険について考えてみる。

フィールドは上記のように海・川・湖・池・沼、これらのフィールドで起こりうる事象はどんな事があるのだろうか。

海の危険

前回磯釣りでの危険についてお話ししたが、一般的な海釣りの場合に起こる危険について考えてみよう。

近郊の波止や岸壁、釣り公園などには家族連れやお年を召した釣り人の姿もよく目にする。

こういった方々に起こりうる危険とはなんだろうか。

まず第1に考えられるのは海中への転落である。

足を踏み外す、よろける、目まい、強風にあおられる、クーラーに座っていての居眠りなど、色々な要因で海中に転落してしまう事がある。

この場合落ちた事に気づいた方がすぐにしなければならない事はなんだろう。

それは何かにつかまらせる事である。

まずつかまらせる物は水汲みバケツが1番適しているのではないだろうか。

しかし水汲みバケツについているロープは7~10㍍、もし岸壁の高さが4㍍とすれば、助けられる範囲は10㍍ロープの場合でも6㍍の距離しかないという事になる。

救命用のロープでも長さは15㍍ほどだ。

と言っても一番効果のある救命グッズにはなる。

水汲みバケツは持っているだろうが、救命ロープも釣り人ならぜひ持っておきたいものである。

流れの無い岸壁ではこのロープでもつかまらせる事が出切るが、潮の早い岸壁の場合はすぐに届かない所に行ってしまう。

北九州の関門海峡など、早い時には8ノットもの潮が流れる事がある。

8ノットと言えば、1秒で約4㍍、1分で約240㍍の速さなのである。

もしこの潮の流れが速い時、海中に転落したならば、すぐに何かにつかまらせないと、助けようと考えている間に遥か遠くに流されてしまうという事にもなりかねないのである。

ロープ付きの物が届かない場合は、すぐにクーラーやペットボトル等浮く物を投げ、海の救急「118番」に連絡する事である。

近くに船がいれば大きなジェスチャーでその船頭に知らせる事も大切である。

ある時、関門海峡で釣りをしていると、目の前を人が流されていったという人がいた。

もちろんその人は助けようとしたが、何を投げても届かなかった。

またすぐに118番にも連絡し、救助を要請した。

しかし速い関門の潮流では、あっという間に流され見えなくなったそうだ。

その後その方は無残な姿で帰ってきたそうだ。

その方は助けてもらおうと結構もがいていたらしい。

しかし潮流は早く、もがいたために力尽きたのではないだろうか。

この時、何か浮くものにつかまっていれば助かったのではないだろうか。

もし落ちた場合、または落ちた人につかまらせる場合、クーラーやペットボトル(1.5㍑程度)ならば十分に人間を浮かせられる。

こういった物へのつかまり方だが、上から覆いかぶさるのではなく、仰向けになりおなかの上に抱きかかえるようにする。

いわばラッコのような体制になり、体力を使わず救助を待つ。

もし無ければ、スーパーやコンビニでもらうビニール袋でもいい。

この口をしばると、簡易的な浮き袋の代わりになる。

このペットボトルやビニール袋の場合、中に少し水を入れる事で、ずいぶんと投げやすくなる事も覚えておきたい。

よくテレビなどで自分が飛び込んで助けようとする場面があるが、これは落ちた相手が小さな子供や何も出来ないお年寄りで無い限り、非常に危険な行為である。

溺れている人はパニックを起こし、何にでもつかまろうとする。

もしこれが助けに来た人間ならばいきなりつかまり助かろうとするだろう。

そうすると助けに行った人もいきなり自由を奪われパニックを起こし、両者が溺れる事になるのである。

人命救助を行っているライフセーバーでも、浮力体を持たずに人命救助に向かう事はしないと言われている。

それほど溺れている人を泳いで助けるのは難しい事なのである。

今までは助ける方法だったが、海で釣りをする場合、家族や友人と釣りをする場合、一番考えておかなければならない事はなんだろう。

それは全員が落ちないようにいつも見ているという事である。

もし魚が釣れていても自分は釣りに夢中になったりせず、常に子供たちの動きには注意しておきたい。

そしてもうひとつ大切な事は、もし落ちた事を考えて、きちんと救命着を着せておく事だ。

救命着は、危険を伴う磯などへ行く場合はほとんどの人が身に付けているが、岸壁や波止へ釣りに行く場合はなかなか着ない事が多い。

そうでは無く、どんな釣りにおいても、安全を考えたスタイルで望んで欲しいものである。

この転落という事故について悲惨な事象をお話ししておこう。

季節は冬、寒グロのシーズン真っ盛りだった。

場所は博多湾出口にある玄海島のとある瀬だった。

この日は後に風が強くなるという予報だったが、朝の時点ではそれほどでも無かった。

しかし時間が立つにつれ風が強くなってきた。

ここ玄海島は博多湾出口にあり、北西の風には滅法弱い地形だ。

案の定風と共に波も高くなり釣りが出来る状態ではなくなってきた。

私の友人は急いで避難しようとしたが、とても片付ける時間は無かったそうだ。

そこで何も持たずに急いで安全な所へと避難した。

波が洗っている向こうの瀬には愛用の釣具が残されていたが、自分の命には代えられない。

友人は涙を飲んで自分の釣具を見守りながら船を待ったそうだ。

その時、同じ場所で釣りをしていた方がいた。

その人も同じように釣具を残したまま避難したが、残した釣具の事が気になったのだろう。

なんと波を乗り越え、自分の釣具を取りに行ってしまったのだ。

その結果は・・

荒れ狂う波は容赦なく釣り人を飲み込み、そこにある岩盤に釣り人を叩き付けてしまった。

友人は頭から血を流した釣り人が流れていくのを見送るしかなかったそうだ。

もちろん、友人の釣具も全部流されてしまった。

しかし尊い命は迎えの船に助けだされ、流された釣具もこの事実を聞いた友人たちによってかなりの物が揃えられたそうだ。

釣具も自分が汗水流して働いた尊いお金で買った大切なものだと思う。

しかし、何よりも大事なのは自分の命だという事件であった。

次に天候による危険はないだろうか。

以前西高東低の冬型の気圧配置による強風についてお話したが、もうひとつ危険な天候に関する用語に「春一番」という物がある。

この春一番とは、2月下旬から3月下旬に掛けて発生するもので、低気圧が日本海に入って急激に発達し、強烈な南風を伴う現象を言う。

この風速は20㍍以上にも達し、台風並みの強風が吹くのである。

またこの低気圧の発達の仕方は非常に速く、時には予想が遅れる事もある。

冬季の風には強い東側を向いた地方も、この春一番には弱く、今まで大きな事故も何度か起こっている。

釣りに行く前、天気予報には耳をよく傾け、春一番とか低気圧が発達するとか何か異変が起こりそうな事象の言葉には、敏感になってもらいたいものである。

次に釣りの格好について一言。

皆さん、ブーツや長靴を履くときに一番外側のズボンはどうやっているだろうか。

ブーツの中に入れる人、ブーツの外側に出す人、それぞれだと思う。

ではこの2つ、どちらがいいのだろうか。

まずブーツの中に入れた場合を考えてみよう。

この場合、海に落ちた時、水圧はブーツの外側とブーツの上方からブーツの中へと掛かる。

すなわちブーツの中には一気に海水が入ってくるのである。

ブーツの中が海水で埋められると、足が非常に動かしにくくなる。

次にブーツの外側にズボンを出した場合はどうだろうか?

この場合、ズボンの外側から水圧が掛かり、ズボンがブーツにへばりつくような形になる。

そうなる事によって、ブーツには海水が入りにくくなるのだ。

もちろん多少の海水は入るだろうが、ズボンをブーツの中に入れるより入りにくい状態になるのである。

このブーツの履き方ひとつとっても、安全上には大きな意味があるのだ。

次に海に住んでいる生物によって引き起こされる危険ってないのだろうか。

これが結構多いのだ。

地方によって住んでいる種類は違うが、危険な生物を上げてみるとこんなにもいる。


刺胞動物(毒液を注入する針(刺糸)を備えた細胞内小器官をもつ細胞がある)
カツオノエボシ・シロガヤ・クロガヤ・イラモ・スナイソギンチャク・ウデナガウンバチ・ウンバチイソギンチャク・ハブクラゲ・アカクラゲ

環形動物(環状の体節が直列に並んだ構造をしている(体節性)
ウミケムシ

軟体動物(体は骨格がなく、皮ふは粘膜におおわれていて、体が乾燥すると生きることができない)
アンボイナガイ・タガヤサンミナシガイ・ヒョウモンダコ・オオヘビガイ・カキ類)

棘皮動物(ハリネズミのようなトゲのある皮を持つ動物)
イイジマフクロウニ・ガンガゼ・ラッパウニ・オニヒトデ)

脊椎動物
エラブウミヘビ・エイ類・ゴンズイ・ミノカサゴ・オニオコゼ・オニダルマオコゼ・ハオコゼ・アイゴ・ウツボ・ダツ類・サメ類・フグ類)


この中には死亡例が報告されているものもいるので、知らないものにはうかつにさわらない事だ。

死亡例のあったものとしては、カツオノエボシ・ハブクラゲ・アンボイナガイ・タガヤサンミナシガイ・ヒョウモンダコ・ラッパウニ・オニヒトデ・エイ類・オニダルマオコゼ・ダツ類・ウミヘビ類・サメ類・フグ類がある。

棘が刺さって毒を注入され死亡した例もあるし、ダツのように体に突き刺さって死んだ例もある、フグのように素人が調理する事によっての死亡例もある。

これらに刺された場合は種類によっても違うが、おおむねすぐに刺された箇所の毒を吸出し、真水で洗い病院に直行するのが懸命である。

毒が回ってしまうと、体全体に激痛が走ったり、麻痺を起こしたりする事があるので、十分に気をつけたい生き物たちである。

またフグはテトロドトキシンと呼ばれる猛毒を持っていて、正しく調理しないと食中毒を起こし死に至る事がある。

過去のフグによる食中毒は、素人調理によるものがほとんどで、フグを調理するには正しい知識と技術が必要だ。素人調理は絶対しないように。

フグの毒=テトロドトキシンは青酸カリの千倍以上と言われる猛毒だ。

フグの肝臓や卵巣などの内臓の他、フグの種類によっては皮や筋肉にも含まれる。

またこの毒は加熱に大変強く、調理程度の加熱では壊れない。

ちなみにトラフグ1匹分の毒量は、約10人分の致死量に相当する。

よくフグを自分で調理している人がいるが、絶対やめていただきたい行為である。

最後に健康面で気をつけておきたい事があるので解説しておこう。

海釣りの場合、日陰の無い場所で行う事が多い。

特に真夏の炎天下で釣りを行う場合は、熱中症による事故には十分な注意が必要だ。

こういった場合、格好は日焼けを避けるために長袖のシャツとズボンを穿き、その素材は汗を吸収しやすく通気性の良い物にする。

また長い時間釣りをする事は避け、疲れる前に小休止をして水分・塩分を補給する。

その際に冷たいお絞りを用意しておき、腕や首の後ろ、顔、後頭部などを冷やしてあげるとよい。

熱中症はまじめな方、熱中しやすい方が、休む事を忘れかかってしまう事が多い。

そのグループのリーダー格の人がそういった人への気遣いを行い、必ず休憩を取るように心がける。

熱中症は生命に関わる病気である。

夏の暑いとき、日は照っていなくても蒸し暑いときなどは特に注意したいものである。
 

川の危険

川で一番危険な事に何が上げられるだろうか。

それは増水である。

増水には雨による自然の増水と上流にあるダムの開放に伴う人為的な増水がある。

川と言うものはそもそも山に降った雨が海へと注ぐ道筋なのである。

と言う事は山に多量の雨が降ったとき、必然的にその雨が集まり、川に激流となって流れ込んでくる。

それが鉄砲水と言われる現象だ。

今いる地点では雨が降っていなくてもその川の上流地点で雨が降れば、それが下流地域に一気に押し寄せる事がある。

鉄砲水はあっという間に押し寄せ、何もかも下流へ押し運んでしまう。

この鉄砲水から身を守るにはどうしたらいいのだろうか。

それはまず自分がいる地域をよく把握し、上流部の天気にも気を配る事だ。

そして川では鉄砲水の前兆によく注意を払っておく。

鉄砲水の前兆とは以下のような事だ。

・石がパラパラと落ちてくる。
・地面にひび割れが出来る。
・山鳴りや妙な音がする。
・がけに裂け目が出来る。
・陥没や隆起が起きる。
・川の水が急に濁る。
・湧き水が止まる。
・山の木が傾いている。
・傾斜面を水が走り出す。

このような現象のうちひとつでも起これば鉄砲水を疑う。

水はあっという間に何十倍もの流れで押し寄せるので、すぐに安全な場所へ移動する事だ。

それと同じような意味で、中洲でのキャンプも避けなければならない。

川の中州は一見安全なように見え、川の流れもすぐそばにあり快適なように見える。

しかし上記のような鉄砲水の場合、あっという間に川のど真ん中になり流されてしまうのだ。

1999年8月14日、神奈川県の玄倉川(くろくらがわ)においてキャンプ指定地外でキャンプをしていた18人が上流の増水によるダムの放流によって流され、13人の方々が亡くなられた。

この事故は水が流れてくる旨の警告を再三に亘って無視したキャンパーによる事故だった。

この場所は砂防用に造られた立間堰堤上流の、水流が湾曲する地点に広がった堆砂地で、堰堤より2㍍高かった。一見キャンプ適地のように見えるが、植生が見られないように、豪雨の際は水没する地点だった。

このように水に対する知識が無いと、大きな事故に巻き込まれてしまうことにもなるのである。

他に危険な事はないだろうか?

川は都会を流れる川もあれば、静かな田園風景を流れる川もある、また渓流釣りで行くような奥深い山の中に川がある場合もある。

これら色々な所に入ると、野生動物の危険に遭遇する事がある。

日本にいる野生動物として、ヒグマ・ツキノワグマ・キツネ・シカ・イノシシ・サルなどが上げられる。

いずれもこちらの存在をわからしておけば出会う事は少ないのだが(サルを除いて)、ばったりと出会うと襲われる事が多いので、十分注意が必要である。

特に渓流釣りなどで山中でキャンプを張る場合は、絶対にテント外に食べ物を置かないようにし、テントから食べ物の匂いがしたりなどしないように、そこに食べ物があると動物に気づかれないようにしないと、場所によってはクマに襲われたりもする。

また地域によってはクマが出没するので、野営が禁止になっている場所もあるので十分注意しなければならない。

日本ではテント内で調理したり食事したりが常識だが、北米ではクマの生息地においてこのような事をする事は自殺行為だと言われている。

野生動物は食べ物の匂いには敏感で必ず夜には寄ってくると思ったほうがいい。

危険な動物がいる地域では野営をしないように心がけよう。

次に危険なのは毒ヘビではないだろうか。

日本にはマムシ・ヤマカガシ・ハブといった毒ヘビがいる。

これらのヘビは人間の気配に対し、逃げるときもあるが、その場でじっとしたままの場合もある。

一番多いのは草むらに分け入り、そこにヘビがいる事に気づかず踏んづけて噛まれてしまう事故だ。

ここで動物やヘビに噛まれてしまった場合の対処法について説明しておこう。
 

犬など動物の場合

動物に噛まれると、傷が軽くても普通の傷より化膿しやすく、重い感染症を引き起こす可能性がある。

特に野生動物は色々な雑菌を持っているので、注意が必要だ。

まず噛まれたら綺麗な水で傷をよく洗い動物の唾液を流してしまう。

その後でもう一度濃い石鹸水をガーゼに付けてこすって、水で洗い流す。

傷口から出る血は無理に止めないで、むしろしぼりだすようにする。

噛んだ動物によって狂犬病などの悪い病気を持っている事があるので、かならず医者に見せ、調べてもらう。

毒蛇の場合

日本では毎年マムシに数千人が噛まれているが、そのうち10~20人程度が死亡していると推定されている。

ハブは毎年100名前後が噛まれているが、平成に入ってからはほとんど死者は出ていない。

ヤマカガシは噛まれた人数は不明だが、ずっと以前は無毒の蛇だと言われていた。

しかし1972年に中学生が噛まれ死亡してから、毒蛇として認識されるようになった。

これらの蛇に噛まれた時の対処法は、

まず患者を安心させ、休ませる(決して動き回らせない)。

傷口を動かないようにし、傷口の上部(5~6㌢)をタオルなどであまり強くない程度で縛る。しかしあまり強い止血はかえって悪い結果を招く事もあるので、少なくとも10分に1回程度ゆるめる必要はある。

次に傷口から毒を吸い出す。吸引器があればそれを使うのが一番であるが、口で直接吸出し、出血する血液と共に毒液を吸い吐き捨てる。

これを何度も繰り返す。

仮に失敗して飲み込んでしまっても胃の中の強い酸性の胃液によって毒蛋白を分解するので心配はない。ただし口内炎など口の中に傷がある場合は避けたほうがよい。

血が出なくなったら塩水で熱い湿布をする。そしてさめたらまた吸い出す。

毒や血液を吸い出した後は他の菌による混合感染を防ぐため、消毒剤による処置は必ず行う。

氷などで患部を冷やしたりはしない。また患者に絶対酒を与えてはいけない。

傷口は何のヘビに噛まれたかわからなくなるのでナイフで切ったりしない。

患者は可能な限り安静を保ち、救急車の応援を求める。

患者には水分を与え、血液中の毒素濃度を薄め、毒素排出につながる利尿作用を促進する。

タンニン酸の活用をする。蛋白凝固剤のタンニン酸とヘビ毒(出血毒)が直接触れ合うとヘビ毒は中和分解される。

タンニン酸は薬局にも売っているが、含有する物として渋茶や柿渋がある。

いずれにしても的確な処置を行い一刻も早く医師の診断・治療を受けるのが一番である。

この他虫類としてアブ・ブユ・ムカデ・スズメバチ・ミツバチ・アシナガバチなどがある。

この中でも特に危険なのはズズメバチを代表とするハチ類で、スズメバチには毎年20~40名の死者も出ている。

スズメバチは人を襲うような危険なハチではないのだが、自分が攻撃されたと認識した時や自分の巣に危険が迫ったときなどは、集団で攻撃に出る。

スズメバチに刺されるとハチ毒アレルギーの無い人で強い痛み、かゆみ、発赤、はれといった局所症状が表れる。

しかしハチ毒アレルギーのある人はきわめて強い反応が起こり、嘔吐、寒気、全身のジンマシンといった全身症状から呼吸困難や意識障害などのショック症状があらわれ、時には死に至る事もある。

これはアナフィラキシーショックと言われ、初めて刺された時よりも2度目に刺された時の方が多いと言われている。

これは最初に刺された時は抗原の侵入により体内で抗体が作られ、2度目に刺されると同じ抗原が体内に侵入した時、1回目よりも急速で強い反応が起こるためである。

スズメバチは外的に対して巣を守る防衛本能が発達しているので、決して巣に近づいてはいけない。

もし突然遭遇した時は、頭を隠し姿勢を低くしてゆっくりとその場を離れる。

スズメバチは「黒色」を攻撃する性質があるので、頭を隠すのである。

また襲ってきたスズメバチに対し、手で払いのけたり急いで逃げたりするのは、かえって興奮させる事になるので避ける。

また匂いにも敏感なので、ヘアスプレー、ヘアトニック、香水などはつけないようにする。

音や超音波で虫を遠ざける小型超音波発信器は興奮を誘うので使用を避ける。

このような事を守り、極力刺されないようにする。

もし刺された場合の対処法だが、

毒液による痛み、腫れ、患部の炎症、痒み、体温の上昇が刺傷後10~15分後に発現する。

まず身体に回る毒成分の量を減らすため、できるだけ速やかに毒液を口或いは市販の器具を用いて吸い出す。

20%タンニン酸軟膏、3%タンニン酸アルコール、渋柿の汁などを刺された直後に患部に塗り、後に水洗いする。

患部の腫れや痛みには冷湿布をし、抗ヒスタミン剤を含むステロイド軟膏を塗る。

患部を冷やして迅速に医療機関で手当てを受ける。

このような対処を取るが、人によりアレルギー反応の程度は異なる。

1回目に刺された時、身体各所或いは全身の蕁麻疹、だるさ、息苦しさなどの症状がある時は、次回の刺傷に十分な注意が必要なので、ハチ毒に感作されているかどうか(ハチ毒の抗体をもっているかどうか)を調べてもらったほうがいいだろう。

もし持っている人は医師に相談し、自己注射用エピネフリン注射液を処方してもらった方がいいかもしれない。

最後に淡水域にも危険な魚はいる。

ギバチ・ギギ・アカザ・ネコギギがそれらで、いずれも毒棘を持っているので十分注意する。

湖の危険

湖は地表上の水で覆われた領域の内、規模が大きく、かつ海洋と連続しないもの(ただし川を介して接続する場合を除く)。中央部は沿岸植物の侵入を許さない深度(5~10㍍以上)を持ち、通常は池や沼などと呼称されるものよりも大きいものを指す。古くは「あわうみ」とも読まれた。一般的に湖は広く琵琶湖などは水平線が見えるほどの大きさもある。

湖における危険だが、湖は広いだけに川とはまた違った現象が起こる。

広いと起こる現象、それは波高が高くなるという事である。

琵琶湖などは風が吹き出すと海のように時化てしまう。

まして湖で乗るのは小さなボートが多いので、風波に負け、目的地まで辿りつけなかったり帰れなかったり、悪い場合は転覆などの事故が起こってしまう。

続いて湖では、氷上のワカサギ釣り最中に事故が起こる事がある。

冬季に結氷する湖では、氷に穴を空けてワカサギの穴釣りが行える。

この氷上に乗っていいかどうかの判断は各湖によって違うが、だいたい氷が15㌢前後の暑さになると氷上釣りが解禁される。

しかし、湖によって乗っていい場所、危険な場所の指示があるので、必ずこの指示を守るようにする。

これを守らないと氷が割れて水中に落下と言う危険な状態が起きてしまう。

氷の張った湖の温度は零度より低い事が考えられる。

この水に落ちた場合、15分以内に意識不明に陥り、45分以内に死亡する。

と言う事はもし落ちた場合、早急に助け出さないと命が危ないという事になる。

もうひとつ湖に起こる不思議な現象がある。

海の場合、海流によって深い水深の場所でも酸素は存在する。

しかし湖は対流が起こらないので、深いところに行けば行くほど、酸素は欠乏していくのである。

この対流が起こらない理由だが、湖では数メートル(6~10㍍)のところに、冷水の塊の断層が出来る。

真夏で表層が20度近くまで上昇しても、その断層で温水(対流)がさえぎられ、深くへは酸素が運ばれないのだ。

湖に入った場合、この無酸素状態と、その断層が上昇してきた時に起こる冷水塊に十分注意しなければならない。

湖で泳ぐ場合、この冷水塊により心臓や筋肉が麻痺する事故が絶えないのである。

夏の白樺湖では8㍍の水深で溶存酸素量はゼロだった。

8㍍と言えば、慣れた素もぐりの方ならばもぐれる深さである。

湖は不可思議な現象が起きる地域である。

池・沼の危険

池・沼・湖の定義だが、大きさから言うと

池<湖沼という事になるらしい。

そして人工的に作られたのが池、自然に存在するのが湖沼だという。

湖沼の区別は水深が5㍍以内で、水草が茂り透明度が低いのが沼、池や沼よりも大きく、沿岸植物が生育できない深い湖盆(5㍍以上)を持つのが湖だとされている。

現象的には湖と同じような事だが、池や沼は泥質の事が多い。

この泥質の底に足を取られたり、底からの水草に足を取られたりの事故が起こっている。

また岸で釣っていて、泥質の地面が滑り這い上がる事が出来ずに水面へ転落するという事故も起こっている。

その他の危険

その他共通する危険にはどんなものがあるだろうか?

釣り針が刺さる事故、オモリが頭に当たる事故、電線に触れ感電、バッテリー、落雷などが上げられる。

これは釣りを行う限りどの場所でも起こりうる事故である。

まず釣りバリが刺さる事故だが、これは自分が仕掛けを投げるとき、船から仕掛けを入れる時のみならず、人が釣っているのを見学していても、ハリが刺さる事がある。

ハリが刺さった場合、ハリのカエシ部分まで刺さった場合はなかなか抜くことが出来ない。

魚に掛かった場合もなかなか抜けないので当然といえば当然だが、あと少しの所がなかなか抜けないのだ。

ニッパーなどで掴んで無理やり抜こうとする人もいるが、この行為は傷口を広げたり、子供の場合はその行為がトラウマになり釣りが嫌いになったりするのでやめる。

少々痛いが、鈎を突き刺し鈎先を出す。

そこで鈎先か鈎の根元部分をニッパーで切り落とし鈎を抜く。

一番確実な方法は医者に行く事で、医者にかかれば麻酔をうち、刺さった箇所を少し切り鈎を抜いてくれ、消毒までしてくれる。

自分で抜いた場合もそうだが、鈎には雑菌が多くついている。

ぜひ処置した後はきちんと消毒まで済ませよう。

他に投げ釣りのオモリが当たってしまう事もある。

これは投げ釣りを始めて間もない人に多い事故で、きちんと投げる基本がわかっていず、自己流で投げる人によく起こる。

なれないうちは必ず剣道のお面のように真っ直ぐに竿を振ると、失敗しても人には当たらない。

少し投げれるからとスリークォーターや横に投げたりすると思わぬ事故が起こってしまう。

また回りに見学者がいた場合や釣り場が人で混んでいる場合は、自分が竿を振る範囲に人がいないか十分注意して投げないと、オモリが当たったり鈎が刺さったりの事故が起こってしまう。

次に命に危険を及ぼす事故に感電というものがある。

現在の竿は高純度のカーボンで出来ており電気の伝導性が非常に高くなっている。

川にかかる送電線や電車の架線に釣竿が触れ感電するという事故が起こっている。

まず川にかかる送電線だが、高い送電線ほどより多くの電気を送っている。

この送電線には非常に高圧の電気が流れているので、実際に電線に触れなくても近寄っただけで通電してしまう恐れがあり非常に危険だ。

次に架線だが、架線は一般的には地上から5㍍の高さに設置されている。

つまり5㍍前後の竿を持ったまま線路を渡ろうとすると架線まで届き感電してしまうのだ。

移動する時は必ずたたむという事を忘れてはならない。

最近電動リールの開発も目覚しく超小型のバッテリーも増えてきた。

その中でまだ主流なのは+と-の電極のあるバッテリーだ。

このバッテリー、電極がむき出しになる事が多く、不意にスパークしてしまう事がある。

電気を通す物質、例えば竿などがこの電極に同時に触れた場合どうなるだろう。

通電しスパーク、その部分は破裂してしまうのだ。

これは何かの拍子にバッテリーの上に物を落とした時にも起こりうる事象だ。

バッテリーの電極はむき出しにせず、カバーを掛けるなど事故が起こらないようにする。

最後に落雷による危険だ。

魚釣りは自然と対峙する遊びなので自然現象と遭遇する事も多い。

その中に雷がある。

特に夕立の場合はいきなり暗くなり雷が鳴り出すという事もよくある。

また前線の通過中は特に雷が多く、突風とともに気をつけなければならない。

雷は電気を通す物質ではなく、周囲にある一番高い物に落ちる可能性が高い。

また雷は遠くで鳴っていてもいつ落ちてくるかわからないのである。

雷鳴は約10kmに近寄ると聞こえると言われている。

10kmと言うと、そこはすでに雷雲の中なのである。

特に釣りの場合は竿を頭上高く上げる事も多く、雷がいつ落ちても不思議ではない状態を作っている。

雷の音が聞こえたら、すぐに竿は折りたたんで出来るだけ安全な所へ逃げ込む。

近くに車があれば車の中が一番安全だが、無い場合は出来るだけ身を低くして伏せると言う事だ。

大きな木や岩などは一見隠れるのに都合がいいように見えるが、実は雷が落ちやすいのである。

木の陰に隠れていた人が雷に打たれて亡くなる事故も起こっている。

木は避雷針の役目も果たすが、保護されるのは45度の範囲に限られる。

木の高さにもよるが、雷の側撃を考えると3メートルは離れる必要がある。

またゴロゴロと鳴ってはいるが、稲光がせず、あたりの空気が湿っぽい事がある。

このような時は、雷が近くに寄ってこなくてもそこら中の空気が帯電してしまう事があると憶えておいてほしい。

以前瀬の上においてこのような現象に襲われたことがある。

あたりの空気はかなり湿気を含みじっとりとする雰囲気だった。

遠くに雷が鳴り出したが、まだまだ音は遠いと皆安心しきっていた。

それから少し音が大きくなったが、なぜかあたりは薄暗いのに稲光がしなかった。

ふと見ると帽子をかぶっていない何人かの髪の毛が急に立ちだしたのだ。

その時1人の手に電気が走った。

皆釣竿から電気が走っていると思い何人かが釣竿をその場に置いた。

その途端である。

釣竿が地面に置かれた瞬間パ~ンという音と共に火花が走ったのである。

この現象はうまく説明する事は難しいが、たぶん全員の身体に電気が溜まってしまったからだと思う。

ゴロゴロと雷鳴はしているが稲光はしなかった。

という事は確かに雷は鳴っているが、電気は空気中の水分を通して四方八方に飛び散っていたのではないかと思う。

そして時間が立つにつれそこにいる人間に電気が溜まっていった。

それが髪の毛が立った現象に現れたのだと思う。

そしてその電気が放電されたのが竿を地面に置いた瞬間だったのではないだろうか。

このことを見てみると、雷は近くにいる時だけが恐いのではなく、発生した時点から何がしかの危険性があると言える。

竿を置くことを臆病だと思うか、自分の命を守るための懸命な処置だと思うか。

自分に落ちてしまってから悔やんでも襲いのである。

最後に

ここに上げた事象は実際に起こった事も含まれているが、起こりうる可能性のある事を書いている。

と言う事はいつあなたに起こるかもしれないという事だ。

こういう事を知っているのと知らないのでは自分の身を守ることにおいて大きな差があるという事を知ってほしい。

釣りはあくまでも遊びであり、レジャーなのだから。

ポイント フィッシングアドバイザー 田中万傍