瀬渡し船・釣り船の乗り方

磯へ釣りに行く、船から釣りをする。

どちらも楽しい事だが、最近その姿勢やマナーが乱れている人を結構見受ける。

最低限必要なマナーを身に付けておかないと思わぬ事故が起こったり、釣りが楽しいものでは無くなったりする事がある。

そういう事の無いよう、自分自分が釣りでの最低限のマナーは身に付けておかなければいけないのではないだろうか。

瀬渡しの基本姿勢

磯釣りに行く場合まず基本的な姿勢を身につけ、安全に配慮しなければならない。

身につけるものは救命着・磯靴は必須で、きちんと身に付けておかなければならない。

まず救命着はきちんと前のファスナーは締める。

最近は同じメーカーの場合、救命着で締めすぎないように防寒着やレインウエアと一体化出来るものがあるので、その場合はウエアにファスナーで止めるとゆったりと着れる。

この救命着を来た場合、もうひとつ大事な事は股ひもの存在である。

股ひもは落水した時にその衝撃で救命着が脱げてしまう事を防止する目的がある。

格好悪いと言わず必ずしなければならないものである。

また最近はこの股ひもを股に通すのではなく、ズボンやヒップガードの横に股ひもを通すタイプのものもある。

上記の写真は一見救命着のファスナーは開けっ放し、股ひもはしてない最悪の格好に見える。

しかしこれは防寒着と救命着がファスナーで一体に着れるもので、股ひもはヒップガードにあるジョイントループ(シマノ製)に通しマナーを守っている写真なのである。

最近はこのようにゆったりと着れるように工夫がされている。

救命着は、体重が40kg以上の場合7.5kg以上/24時間以上(7.5kgの鉄片を24時間以上浮かせられる物)、体重が40kg未満の小児の場合5kg以上/24時間以上、体重が15kg未満の小児の場合4kg以上/24時間以上の浮力のあるものが基準である。

また救命着の浮力は永久的では無く、折り曲げや水濡れなどにより浮力が変わる事がある。

よって耐久年数は2~3年と思ったほうがよい。

救命着は磨耗、損傷には十分注意し、万一落水した時に浮力材が飛び出たり抜けたりしないものを着用する。

近年自動膨張救命着というものがあるが、磯釣り用としている物意外は使わない。

これは磯釣りが救命着の磨耗が激しく船用の自動膨張救命着が適さないからである。

次に磯靴をみてみよう。

磯靴にはブーツタイプと短靴タイプ、靴底もスパイク、フェルト、フェルトスパイクとある。

どれを選んでもいいのだが、いずれも靴底や靴の縫合部分には常に気を払い、磯に行って損傷し履けないという事が無いようにしたい。

また靴底のスパイク、フェルト、フェルトスパイクの磨耗は常にチェックし、磯場で滑らないように注意したい。

ズボンの穿き方は「釣りの危険」にあるように靴の外にズボンが来るように履き、落水時に少しでも靴の中に水が入らないようにする。

次に必要な物がないだろうか。

ひとつにホイッスルがある。

これは落水や事故があった時に近くにいる仲間や船に知らせるもので、水濡れに強く、大きな音が出るものを選ぶ。

次にヘッドランプ。

通常瀬渡しする場合は夜明け前の事が多く、瀬に渡る時は船のライトで見えるが船が行ってしまうと途端に真っ暗闇になってしまう。

そうなってから磯バッグに入っているヘッドライトを探しても遅く、この事が事故を招く結果になってしまう事がある。

瀬に渡る時は頭にセットし、すぐに明かりがつけられるようにしておく。

また落水した場合も、海から明かりを照らせば見つけ出しやすいので、なるべくなら防水タイプのものが望ましい。

磯に渡る格好は真夏でも長袖、長ズボンとし、手袋を着用する。

これは不意に手を突いたり身体を磯へぶつけても怪我が最小限にすむための格好で、暑いからと言ってTシャツや半ズボンで磯の上にいるような事はしない。

もしそうするならば高台で絶対安全な所で休憩する時に、周りの安全を十分考えて行う。

最後に携帯電話が普及し、釣りの危険を回避する目的にも何度が使われた実績がある。

ただしメーカーや場所によって通話出来る箇所が決まる場合がある。

その場合は、あらかじめ船長にその事を伝え、緊急事態の連絡方法を確認しておいた方がよい。

また緊急連絡に備え船長へ連絡する電話番号も必ずひかえておく。

瀬渡し船の乗り方・磯への渡り方

磯釣りに行く時多くの場合は瀬渡し船という船に乗って磯へ渡る。

各地の船によってそのシステムは違うが、ここでは基本的な事についてお話しておこう。

磯へ渡る場合、荷物は出来るだけ少なく、コンパクトにしておく。

と言っても何もかもを1つのバッグに詰めて持てないくらいに重くなってしまうのは考え物である。

荷物の重さは緊急事態には荷物を投げる事を考え、投げられるくらいの重さにとどめておく。

基本的にはロッドケース・磯バッグ・クーラー・マキエバケツで、その日のマキエの量によってマキエバケツが1つ増えるか、エサ関係をドンゴロスの袋に入れるかくらいである。

1つのマキエバケツには沖アミなら3角くらいまでで(約9㌔)、それ以上入れると投げる事が出来なくなってくる。

それ以上沖アミの量があるならば、マキエバケツをもう1つ増やした方がいい。

この場合、マキエバケツは40㌢と36㌢など、大きさの違うものを用意しておくと帰る際には1つに出来るので便利がいい。

船に荷物を載せる際には自分の荷物はなるべく1箇所に固めておいた方がいいだろう。

船によっては船室に入れる場合もあるが、その場合は船長の指示通りに置く。

船に荷物を載せる場合は一人で行うのではなく、他の人に荷物を受け渡すやり方で載せたほうが事故は少ない。

その場合、船の上での自分の荷物の位置はきちんと把握しておく。

自分の荷物を載せ終わったら船に乗り込み次の人の荷物を受け取る。

全ての荷物が載せ終わったら船の後ろに行き、安全な位置に座る。

航行中の船で行かない方がいいのは船の横側で、この位置は波しぶきをかぶるし、船の方向が変わるときには振り落とされてしまう事がある。

磯に近づいたら順番に船の前の方へ行き、自分の荷物を確認し前に出す。

この場合船の右前方へはあまり立ち入らないようにする。

これは船長がホースヘッドの前を見る位置で、ここに立たれると前が見えなくなり安全に磯に着ける事が出来なくなるからだ。

それでは磯に渡る場合の注意事項を行っておこう。

瀬渡し船は船のホースヘッドにタイヤなどをつけ、磯へ着けられるようにしている。

日本の瀬渡し船には押し付けと言ってホースヘッドをしっかりと磯に押し付けて人を渡す方法と、磯に近づいた船から釣り人自らが磯へ飛び移る方法とがある。

押し付けの場合は、船のヘッドを磯につけるが、つけてすぐはまだ船が安定していないので、まだ動いてはいけない。

動いていいのは、押し付けて船のエンジンが上がり、船が磯をしっかりと捉えたなと感じられてからである。

磯に着いたらまず自分の荷物を一番前へやる。

そしてまず自分は空身で磯へ渡り荷物を受け取る。

そして他の人から荷物を受け取るわけだが、ここでよく考えていないと事故が起こる可能性がある。

自分ひとりで荷物は渡せると、よく自分の荷物を持ったまま磯へ渡ろうとする人がいる。

船は磯へ着き、安定しているように見えるが、何が起きるかわからないのである。

船の後ろを船が通ったとしよう。

するとその波が前へ押し寄せ、船の船首を跳ね上げてしまう事がある。

その場合空身だと咄嗟にホースヘッドにある手すりを持つ事が出来るが、荷物を持っている場合それが出来ず、海に振り落とされる事になる。

また空身の場合でも、船首から磯へ移る場合は、両方をまたいだ格好でいてはいけない。

船首から磯へは素早く、半ば飛ぶような速さで渡らなければならないのだ。

過去にこう言う事があった。

その日は風も無く波静かで、ゆっくりと荷物を船に渡していた。

その中の経験の少なそうな一人がなんと岸壁と船に足を掛けたまま荷物を積み込んでいたのだ。

危ないよと声を掛けたが、その人は聞く耳を持たなかった。

その時後ろを船が通り、波で船が揺れ、岸壁から離れようとしたのである。

その人はその事に気づきどちらかへ移ろうとしたが、足はすでに開き、どちらにも移れない状態になっていた。

足は完全に開き、いわば股先状態になり、その人からは悲鳴が上がった。

船を戻そうとしたが、そんなに簡単に戻るような船ではない。

しかしなんとか船を戻し事なきを得た。

これは船に移る際に一番まずい事をしたゆえの事象をお話ししている。

この時は本人が痛かったくらいで怪我は無かったが、もう少し船が離れれば股が完全に裂けるか、海に落ちているのだ。

静かな海でもこのような事がある。

自分の身は自分で守らなければいけない。

そんな事象である。

さて話を渡り方に戻そう。

渡ったらすぐに少し上へ上がり、船が多少ずれても大丈夫な位置でしかも荷物が受け取れる位置を確認し、足を置く。

そこで荷物を手渡してもらう。

手渡された荷物は少し上へ転がらないように置き、全部渡されたら素早く自分の荷物の個数を確認し、間違いがなければ船に合図を送る。

合図を送ったら荷物をもっと上の安全な位置へ上げる。

この場合、潮の干満、波の状態を見てどれくらいの位置が安全かを判断するが、暗いうちはかなり上まで上げておいた方がいいだろう。

もし磯に渡るのが最後の一人になった場合は、荷物を一番前に置き、船が着いてから1つづつ持って磯へ渡らなければならない。

この場合は時間が掛かってもいいので慎重に行動する。

これは瀬にきちんと着ける場合の船からの渡り方である。

もうひとつ、瀬に近づき船から飛び移らせる船の場合はどうだろう。

この場合まず自分が空身で磯へ飛び移るのだが、タイミングを間違えると事故になる事がある。

飛び移るタイミングは船が若干でも持ち上がる時に飛び移る。

船が下がる時に飛んだのではジャンプ力が半減されるからだ。

しかしこのタイミングはなかなかわからないので、慣れるまではベテランの方に同行してもらって声をかけてもらった方がいい。

磯に渡ったら速やかに足場の確保を行い荷物を受け取る。

その際には常時船の動きには注意し、船首にはさまれないように気をつける。

荷物は手渡しで行うが波がある時には投げる事もある。

いずれの場合にも体のバランスを崩さないように十分注意し、受け取った荷物は素早く自分よりも上側に置く。

もし最後の一人になった場合は荷物を投げなければいけない時もある。

押し付け方式、飛び移る方式、いずれの場合でも一番注意しなければならないのは船首の動きと滑らない足場を確保するという事だ。

船首は波の動きによって不規則な動きをする。

常に船首を見て、船首が迫ってきた場合は速やかに逃げなければならない。

また足場を取る場合は滑らない場所を確保し、もし万が一滑ってしまった場合は、船首に立って荷物を受け渡している人が素早く船長に後退の合図を出す。

以前こういう事があった。

その日はそんなに時化ておらず落ち着いて荷物を渡し磯に渡っていた。

ほとんどの荷物を渡し次に人が渡ろうとした時であった。

船が瀬に付けているからと足下を見ずに一人の人が磯に渡ろうとした。

しかしその時運悪く船は波の動きで船首を動かし、一旦磯から離れたのである。

その事を知らず渡った人は見事に海へと落ちてしまった。

その時はすぐに船長に合図し船をバックしてもらい、助け上げる事ができた。

しかし落ちた事に気づかず、船が再度瀬に着けようとしていたら、どうなっただろう。

たぶんその人は船と磯に挟まれ、大怪我をして釣りどころではなくなっていただろう。

これは渡る人の注意不足による転落の事象である。

磯に渡る時は船が着いているはずと決め付けず、しっかりと自分の目で確認して渡ってほしい。

こう考えてみると、船首に立つ人、磯の一番前で荷物を受け取る人は一番の熟練者が行うべきで、後輩たちはその姿を見て自分がその熟練者の立場になるように覚えなければならない。

帰る際の磯から船へ移る場合も同じような注意を要するが、船から磯へ移る時よりも難しいので、なるべく初心者を先に船に渡してあげる。

時には船に飛び移らないといけない事がある。

この場合も船が上がりきって下がる時に行わないと飛んだつもりが船に上がれない事がある。

このタイミングも熟練者に声を掛けてもらい自分の身体で覚えてほしい。

荷物は手渡しで行うが、時には投げる事もある。

そういった意味で荷物は投げられるまでの重さにまとめておく。

船に移ったら速やかに自分の荷物をまとめ、次に上がってくる人がいる場合は手伝いを行う。

釣りの組織等に入会している人は先輩が指導しているので、瀬渡しの際に協力する事を当然と受け止め、積極的に手伝っているが、中には自分の荷物を受け取ってもらった後、さっさと船尾に行って手伝おうとしない人がいる。

こういう事がないように、初心者は熟練者の行動を見て身体で覚え、後進に教えていってほしい。

船が次の磯へ移動する場合は、身を低くするか船尾で待機する。

そして船が釣り人の回収を終え港へ向かう場合は、船尾の安全な位置に移り座っておく。

船釣りの基本姿勢

船で釣りに行く場合の基本姿勢について考えてみよう。

まず救命着。

これも磯釣り同様の基準の物を着用する。

この他に船釣りの場合は自動膨張救命着という物がある。

これは救命着に装着されているセンサーが水に濡れた場合、装着しているガスボンベからガスが出され救命着が膨張する仕組みになっている。

1度膨張すると、次に使う場合はガスボンベを換えておかなければならない。

このガスボンベは3年をめどに交換するようになっている。

この他手動膨張救命着というものがある。

これは自分で紐を引く事によってガスボンベからガスが出て救命着が膨張するものであるが、紐を引かないと膨張しないという事を十分熟知していないと思わぬ事故に繋がってしまう。

落水した時にパニックを起こしてしまうようではこの紐はひけない。

という事は救命着がふくらまず、溺れてしまうことになる。

手動膨張救命着を買われた方はこの辺を肝に銘じて、落ち着いて紐を引くように心掛けなければならない。

次に靴だが、船釣りの場合は足元が水に濡れる事は日常茶飯事である。

足が水に濡れると、気化熱が発生し、足が非常に冷たくなる。

冬場は我慢出来なくなるので、極力足が濡れないように考えなければならない。

そして船釣りの場合はデッキブーツ、ラジアルブーツ、フェルトブーツのいずれかを履く。

この3つの靴底はそれぞれ濡れた面でも滑りにくくはなっているが、過信をしていると思い切り滑ってしまう事もあるので注意する。

また沖アミやアミをマキエに使う船釣りの場合、それらを靴で踏んでしまうと取れにくくなる。

そういったエサが一番取れやすいのはラジアル底ではないだろうか。

もっとも、帰宅後きちんと水洗いすれば、どの靴でも問題は無い。

間違っても船釣りではスパイクブーツ、フェルトスパイクなど金属製のスパイクがついた靴を履いてはいけない。

これは船が金属製のスパイクにより傷がつくからで、極端に嫌う船長もいるので注意する事。

またFRPの上はスパイク底だと簡単に滑ってしまうので注意する。

釣り船の乗り方

荷物を積み終わったら、船室に入るか自分の所定の位置に座っておくかは船長の指示に従う。

船の移動中は立ったり動いたりしてはならない。

もしどうしても動かなければならない時は、身を低くして手で身体を支えながら移動する。

またよく船べりに腰掛けている人がいるが、船が移動している時、船べりに座るのは一番危険な行為で、船が急に方向転換をしたときなどは振り落とされてしまう。

また船尾などに立っているときも必ず何かに掴まっているようにしよう。

これも方向転換をしたときにつかまる物が無く船から落ちてしまう危険性をはらんでいる。

釣りを開始する際は座る場所の無い船の場合、クーラー等へ座ることになるが、重心の高いクーラーの場合はひっくり返ってしまう事がある。

転倒を回避するには、なるべく重心の低いクーラーで、底にゴム製の滑り止めのついたクーラーがよい。

また船釣りに使用する道具はコンパクトにまとめ、防水性のある道具箱(バッグ)に入れておく。

船釣りの場合は移動する際、道具は船上に置いたままが普通なので、時には道具が波しぶきをかぶってしまう事がある。

その時でも中の道具は濡れないような構造の道具箱を使用し、釣りに支障が起きないようにしよう。

これらの注意事項を守り、釣りを思い切り楽しんで欲しい。

ポイント フィッシングアドバイザー 田中万傍