スズキ(シーバス)ってどんな魚?生息地・生態・旬な時期などの特徴を解説!
シーバスゲームとして通年狙えるスズキですが、実はスズキ目に分類される魚は1万種といわれています。世界の魚種が2万種といわれている中で、その半分はスズキの仲間なんです。今回はおもにシーバスゲームで釣れるスズキの生態や特徴、それに美味しい食べ方まで紹介いたします。
スズキってどんな魚?
古来より日本人に愛されてきた白身魚スズキ。世界中に1万種もの仲間がいますが、日本で釣りのターゲットになっているシーバスは約3種類です。スズキ(シーバス)を上手に釣るにしても美味しく食べるにしても、まずはその生態に詳しくなることが近道です。普段単に「スズキ」と呼んでいる魚が生息地域や時期、大きさなどによって釣れ方も味(食べ方)、名前すらも変わってくることを確認しましょう。
代表的なスズキは3種類
シーバスフィッシングの対象魚は3種!
まずは日本近海に生息するスズキのおさらいをしましょう。代表的なスズキは「マルスズキ」「ヒラスズキ」「タイリクスズキ」の3種類です。後述いたしますが、この中でタイリクスズキだけ毛色が少し異なります。そのため記事の冒頭で「約3種類」とさせていただきました。 ちなみにキスやタチウオ、マダイなどもスズキ目としてスズキの仲間です。食べて美味しい魚種が多いようです。
生息域や生態、産卵時期などについて
生息域は北海道の南部から鹿児島県までの沿岸部とされていますが、同じ鹿児島県でも奄美以南での生息は確認されていません。また3種類のスズキも若干棲み分けがされており、詳しくは後述いたします。
海水魚でありながら淡水が好きで、3月頃から11月頃くらいまでは河口の汽水域などに入って来ることがあります。これはたまたまではなく、規則的に回遊コースに河口を定めているものであるといわれています。
産卵期に関しては生息地域の海水温の関係もあることから「真冬」とだけしておきます。海水温が下がると、河川延長上の大陸棚の水深50~100mあたりの岩礁地帯へ降りていき産卵します。
大型のものはメーター超
いわゆる「ランカーサイズ」と呼ばれるスズキは80㎝以上と規定されていて、大型のものは1メーターを越えることもしばしばあります。JGFA(日本ゲームフィッシング協会)では記録の登録が重量ですので長さに関してはまちまちの情報が出ていますが、130㎝を超える個体も釣られています。 大きな口で小魚を吸いこむように捕食するスズキにはほとんど天敵がいません。白身魚特有の瞬発力も有り、やや夜行性の習性を持つことからエサである小魚を豊富に摂取することができます。魚体が大きくなるのもうなずけますね。
シーバス日本記録 |
重量 |
場所 |
日付 |
マルスズキ |
11.9kg |
大分県 |
2010.10.13 |
ヒラスズキ |
10.91kg |
静岡県 |
2011.2.10 |
※タイリクスズキは2020年4月よりの受付なので、データが出揃っていませんので割愛いたしました。
外見でわかる3種類のスズキ
生息数の多い「マルスズキ」
一般的に「スズキ」といえばこの魚を指します。産卵のために冬場に深場まで潜ることはありますが、ほぼ通年北海道南部から鹿児島県までの沿岸で見ることができます。
沿岸に生息していることから、生息域の水質がその味に影響するとされています。実際に臭いスズキを食べたことがありますが、個人的には釣り上げた時の血抜きの作業、皮と内臓の処理をきちんとすれば身自体に臭みはそれほど無いように思えます。
荒磯の王者「ヒラスズキ」
ルアーマンの憧れの的と言っても過言ではないのが「ヒラスズキ」です。速筋の発達した白身魚ゆえの強烈な引きと、個体数の少なさからくる希少性でルアーマンを魅了し続けています。
マルスズキに比べて体高が高く尻尾の付け根が太いのが特徴で、いかにも力がありそうな体型をしています。実際に生息場所も(多いのは)関東以南の荒磯で、マルスズキのように河口に現れることは稀。潮通しの良い岩礁地帯で捕食活動をしています。
生息地域が限定されている「タイリクスズキ」
3年で70㎝以上に成長するタイリクスズキは、その成長の速さから養殖魚として台湾などから輸入されたものが逃げ出し、定着したものであると考えられています。 分布は主に西日本の沿岸部に限定されますが、体側に入ったウロコより大きな黒点が特徴で見分け方の目印になり、判別は難しくありません。食味も釣味も日本スズキと遜色ないですし、一時は同じものであると思われていたほどです。その頃の呼び名は「ホシスズキ」だったそうです。
有明海(特に佐賀側)で収穫されるシーバスにはほとんど体側(モノによっては背びれまで)に黒点がありますが、純粋のタイリクスズキのものよりは小さな黒点が数多く入ります。これはニホンスズキとタイリクスズキの交配種ではないかと言われています。これが冒頭での「約3種類」の理由です。
スズキのタイプ |
生息域 |
身体的特徴 |
マルスズキ |
北海道南部から鹿児島県屋久島までの沿岸 |
細身で黒銀色 |
ヒラスズキ |
千葉県・石川県より南部、鹿児島県屋久島までの岩礁地帯 |
体高が高く尾が太い |
タイリクスズキ |
西日本沿岸部(特に有明海で多数確認) |
体側に黒点 |
地方で変わる呼び名
スズキ(鱸)の由来
スズキは漢字で「鱸」と書きますが、これは音読みの「ロ」を魚へんにあてたものだと言われています。ロの発音がスズキの口(くち)の大きさを表しているそうです。
また「スズキ」の命名は江戸時代の本草学者、貝原益軒が「まるで水ですすいだような美しい身」であると言った事から「ススギ」から「スズキ」になったと言われています。同時に「煤(すす)けたような体色」からスズキになったという説もあって面白いですね。
スズキのタイプ |
成魚(60㎝)になる年数 |
ニホンスズキ |
約5~6年 |
タイリクスズキ |
約3年 |
スズキは出世魚
スズキがブリと同じく出世魚であることは世間的に周知されていると思いますが、実は生息地域でその呼び名が変わります。方言は別にして、同一魚で呼び名が変わるのはその地域で特別愛されている魚が多いように思います。
関東から東海の場合、幼魚から大きさが約20㎝増すごとにセイゴ→フッコ→スズキと出世していきます。ただし東海地方では一部セイゴの呼び名が無い地域もあります。関西ではフッコにあたる大きさのものをハネと呼びます。どこでも統一されているのはスズキと呼べるのが60㎝以上のものであるということくらいです。
この他にも佐賀の有明方面ではハクラゴやハクラ、徳島ではミズセやハラブト、島根ではチコウハン、アンザシ、愛知ではマダカ、ナナイチなど別名には枚挙にいとまがありません。それも県全体での呼び名ではなく地域名であることが多いので、実際には調べ尽くせないほどです。
地方名はさまざま!
成魚は60㎝以上で全国的に「スズキ」
40㎝~60㎝まではフッコ・ハクラ・マダカ・ハネなど
40㎝以下のものセイゴ・ハクラゴ・セッパ・スナバなど
ゲームフィッシングの王者「シーバス」
釣り方はさまざま
フィッシュイーターであることと沿岸部を生息域にしていることからショア(陸っぱり)からのルアー釣りができます。また、シーバスフィッシングはその高いゲーム性から専用の釣り具なども次々と開発・展開されていますので、チェックは怠らないようにしましょう。
東京湾などではボートや遊漁船でのエサ釣りも盛んですが、堤防などからのゴカイやイソメを房掛けにした夜間の電気ウキ釣りも盛んです。最近では関西地域発祥の「エビ撒き釣り」をする方もいるみたいですが、高価な活きエビ(シラサエビ)を撒き餌として使うため、この釣法はちょっと贅沢な釣りかもしれませんね。
スズキの釣り方 |
一般的な釣法 |
コツ |
ルアー釣り |
ショアまたはボートからのルアーフィッシング。 |
受け口タイプの魚のため、上方のエサを見つけやすい。中下層から狙うと良い。 |
エサ釣り |
イソメやゴカイなどを房掛けにしての電気ウキなどを使った夜釣り。活エビでのフカセ釣り。ブッコミ釣りなど。 |
雑食性フィッシュイーターなのでエビ・カニ・ゴカイなどにも反応。エサは派手めに付けてアピール。 |
泳がせ釣り |
アジやイワシなどを生きたままエサとして泳がせる。 |
捕食自体はあまり上手では無いため早合わせは禁物。じっくり飲ませる。 |
大型スズキの狙い方
居着きのものより回遊型を狙う! 回遊コースや産卵場を意識しよう!
エラ洗いをいなす! 大型のもののエラ洗い(海面で激しく頭を振り逃げようとする)は強烈です。竿先をグッと下げて耐えましょう!
スズキを美味しく食べる!
夏の味覚「スズキの洗い」
これはもう、夏場の「スズキの洗い」に勝る食べ方はないでしょう(個人差あり)。生食すると、淡白な白身ですからアクやスズキ臭さ(これはこれで旨い)が前面に出ます。それを「洗い」によって純粋な旨味に変える調理方法です。
活け締めしたスズキを三枚におろし柵取りします。この時上身に深く縦筋が入っていますので、指で二つ割りにします。刺身に切った時ばらけてしまうのを防止するのが目的です。あとは「厚めの削ぎ切り」にして、流水でしゃぶしゃぶして洗ったら、氷水に落とします。約10分くらいで白濁した半透明になれば食べごろです。ワサビ醤油のほか酢味噌などでも美味しいですよ。
洗い工程表 |
調理方法 |
柵取り |
三枚おろしで皮を曳く |
切り付け |
厚めの削ぎ切り |
洗い |
流水でじゃぶじゃぶ |
氷締め |
透明感が出るまで10分ほど |
皮まで旨い「塩焼き」
白身の魚は塩焼きで食べるのが定番ですよね。鯛しかり太刀魚しかり。漁獲時期と漁獲場所にもよりますが、ウロコを落として水洗いしたスズキから嫌な臭いがしなければぜひ塩焼きは押さえておきたい食べ方です。
二枚におろしたスズキを5㎝くらいの厚みにブツに切ります。両面に軽く塩を振りザルの上などで15分ほど寝かせます。水分がぷつぷつと出てきたらさっと水洗いしてキッチンペーパーなどで水気を拭き、再度軽く両面塩をします。炭火などで「遠火の強火」で焼くのがベストですが、魚焼きグリルでは中火で皮から焼いていきます。皮がぱりっとしたら返しますが、「表4・裏6」の割合で焼きましょう。スダチをかけていただきます。
塩焼き工程表 |
調理方法 |
切り付け |
ウロコを曳いて二枚おろし |
水出し |
軽く塩をして15分 |
味付け |
水洗いして焼く前に再度塩を振る |
焼き |
遠火の強火で表4・裏6で焼く |
トロリとホロリと「煮付け」
刺身や洗い、塩焼きやポワレなど身を美味しくいただいたらアラを煮付けましょう。白身魚のカブト煮はご飯のおかずにもお酒のお供にも何にでも合います。豪華ですしね。
ウロコや汚れを丁寧に掃除したスズキのアラをカブト割りにします。カマは外しても付けたままでも結構です。お鍋やフライパンの大きさに合わせれば良いと思います。冷たいフライパンなどにアラを並べたら、砂糖大さじ山盛り1、醤油大さじ3、みりん大さじ1、酒大さじ3、水大さじ3の順番で入れ火を付けます。沸騰してきたら中弱火に落とし、5~10分煮ます。フタを開け、煮汁をかけながらさらに5分煮たら出来あがり。針生姜などを振っていただきます。
煮付け工程表 |
調理方法 |
下ごしらえ |
アラを流水で掃除 |
鍋に入れる |
冷たい鍋にアラを並べる |
味付け |
砂糖・みりん大さじ1、醤油・酒・水大さじ3 |
煮方 |
煮汁をかけながら |
スズキの美味しい食べ方
生食:刺身・洗い・寿司・カルパッチョ・漬け(ヅケ)など
焼き:塩焼き・ポワレ・ホイル焼き・漬け焼き・西京焼きなど
煮魚:醤油煮・アクアパッツァ・赤ワイン煮・トマト煮など
揚げ物:てんぷら・からあげ・フライ・フリッターなど
スズキに興味が湧きましたか?
古来より日本人に愛されてやまないスズキ。釣りものとしても食材としても一級品です。しかし、今ではなかなか魚屋さんなどでは手に入りにくく、実際に目にしたり食卓に並べられたりすることも少ない魚かもしれません。この機会にシーバスフィッシングに興味を持っていただいて、楽しく美味しいシーバスを追いかけてみてはいかがでしょう?